コラム

部下育成がうまくいかないのは、あなたのせいだけじゃない|やさしいリーダーの3ステップ

「育てたいのに、育たない」
「自分の育て方が悪いのだろうか」

部下育成に悩み、そう検索して、この記事にたどり着いたあなたへ。最初に、どうしてもお伝えしたいことがあるのです。

部下が育たないのは、あなたのせいだけではありません。

そもそも「自分の育て方が悪いのかも」と省みることができる時点で、あなたはとても素敵な上司です。うまくいかない原因をぜんぶ部下に押しつけるひとほど、自分を疑うことをしませんものね。悩めるあなたは、すでに一歩前に進んでいる。ボクはそう思うのです。

申し遅れました。ボクはこれまで企業の組織づくりを支援しながら、noteにリーダーシップについて600本以上書いてきました。結論を先に。やさしさは、弱さではなく、強さです。静かで、穏やかで、やさしいリーダーがダメな理由は、この地球上に存在しません。

この記事でわかること

  • 部下育成がうまくいかない原因
  • 上司だけを責めない、現実的な部下育成の考え方
  • 明日から実践できる「やさしいリーダーの3ステップ」
  • 部下への声かけ例
  • 忙しい職場でも続けやすい目標設定の考え方

 

部下育成とは|「作業をさせる」と「仕事を任せる」の違い

さて、はじめに言葉の意味をそろえておきます。

部下育成とは、「指示どおりに正確に動く部下」をつくることではないのです。

上司は部下に「指示し、動かし、達成させ、褒め、次に向かわせる」。部下は上司から「指示され、動き、褒められ、喜び、次を待つ」。一見、うまく回っているように見えますね。けれど、それは部下に“作業をさせている”だけ。従順なペットを育てているのと、あまり変わらないのです。

部下育成のゴールは、そうではありません。自分で考え、自分で決めて、その約束を守れるひと。つまり「仕事を任せられるひと」に育ってもらうこと。会社とは本来、若い仲間が、ひととして強くなっていくための訓練の場でもあると、ボクは思うのです。

この記事の「3ステップ」も、すべてこの一点「部下が自分で考えて動けるようになること」に向かっています。

 

部下育成がうまくいかない理由|あなたのせいだけじゃない

よくある説明の限界:「上司のNG行動リスト」

「部下が育たない原因」と検索すると、たいてい「上司のNG行動リスト」が出てきます。指示が曖昧、フィードバック不足、任せられていない。

ま、どれも一理ある。大切な指摘だと思うのです。けれど、読めば読むほど、真面目なリーダーほど「やっぱり自分が悪いんだ」と減点方式で自分を追い込んでしまう。そうなっていないでしょうか。

チェックリストで自分に×をつけることと、部下が実際に育つことは、別の話です。原因を「上司の行動」だけに求める説明は、半分しか当たっていないと、ボクは思うのです。

 

構造の問題:そもそも「育てる時間」がない

で、残りの半分。あなた個人ではどうにもならない「構造」の話です。

そもそも、あなたの職場に「育てる時間」はあったでしょうか。

成熟し、モノもサービスも満たされた市場。少子化で労働人口は足りず、採用は年々難しくなる。転職は当たり前になり、ひとは流動的に動く。で、残された上司は、自分の数字も背負うプレイングマネジャー。業務は過多になる一方です。AIを使っても、時間が劇的に増えるわけでもない。

特に地方の中堅・中小企業では、「育てる時間」そのものが構造的に存在しないのが実情です。最低限の人数で回している。OJTもOff-JTも、そんな余裕はどこにもない。。。

ひとは、時間をかければいつか必ず育ちます。人間は、変わる生き物ですから。多くの場合、ボトルネックは上司の能力ではなく「時間」なのです。日照りが続いて収穫が減ったことを、農家ひとりのせいにするひとはいませんものね。まずはその重い荷物を、一度、肩から下ろしてください。

 

それでも「全部、環境のせい」にはしない

ただ、ここで終わりではないのです。「全部、時代のせい」「全部、会社のせい」と開き直る。それは違います。

「あいつはダメだ」「やる気がない」と部下を責める上司には、その言葉がそっくりそのまま返ってきます。リーダーシップは、常にフォロワーシップより先。部下は、あなた自身を映す鏡なのです。

何かがうまくいかないとき、他者を責める前に「私がどう変わるとよいのだろう?」と問う。上司も部下も責めず、それでいて他人事にもせず、自分に変えられる範囲から動きはじめる。

言いかえれば、こういうことです。
部下が育たない原因の半分は、あなたには変えられない「環境」にある。だから、自分を責めすぎなくていい。でも、残りの半分は、あなたの関わり方で変えられる。だから、他人事にもしない。この“半分半分”を同時に手に持っておく。これが、肩の荷を下ろしたあとの正しい構え方だと、ボクは思うのです。この「自分のせいだけど、自分のせいじゃない」という感覚こそが、このあとお伝えする3ステップの土台になります。

 

やさしいリーダーの部下育成3ステップ

さて、ここからが本題です。時間がなくても実践できる、3つのステップ。特別なスキルはいりません。必要なのは「考え方」と「1分」と「毎日の約束」。それだけなのです。

ステップ1:考え方をリセットする

まず、道具より先に「考え方」を整えます。ここが、いちばん大事かもしれません。次の4つを、順番に持ってみてほしいのです。

① 「自分のせいかも」と省みられる自分を、まず認める。
「育たないのは、部下がだめなやつだからだ」そうは思わずに、「自分の育て方が悪いのだろうか」と省みられる。それだけで、じつはグッドスタートなのです。うまくいかない現実を、ちゃんと“自分のこと”として受け止められている証拠ですから。何度も言いますが、それができる時点で、あなたは素敵な上司ですね。

② でも同時に、「自分のせいじゃない」とも思って、肩の荷を下ろす。
そのうえで、今度は逆のことをお願いします。①では「自分のこととして受け止めて」とお伝えしたのに、今度は「とはいえ、ぜんぶが自分のせいじゃない」とも思って、肩の荷を下ろしてほしいのです。

「自分のせいだけど、自分のせいじゃない」。たしかに矛盾していますし、ロジカルでもありません。でも、この一見あべこべな二つを“同時に”抱えておくことが、じつは大事なのです。

だってボクたちは、回っている地球の上で、たくさんの偶然に踊らされて生きています。ボクが日本人なのも、本や音楽が好きなのも、会社をやっているのも、ぜんぶ偶然。目の前で起きることを、なにもかも自分のせいだと抱え込むのは、じつは少しだけ思い上がりでもあるのです。

でも、その偶然に「たまたま出会ってしまった」のは自分だから、自分のこととしても引き受ける。身勝手なようで、じつはバランスの取れた考え方です。これができると、自分の感情をうまくコントロールできる。これはもう、上司としての立派な成長ですね。

そして不思議なことに、上司が自分を責めなくなると、部下の成長にこそドライブがかかります。過剰な成長プレッシャーが消えて、双方に「伸び伸びやろう」という空気が生まれるからです。

③ 「部下の成長」を、勘違いしない。
次に、いちばん大切なこと。「部下の成長」とは何かを、正しく捉え直します。

自分の指示どおりに、思うとおりに動くようになること。それを「成長」と呼ぶのは、もうやめましょう。それは独裁的で、全体主義的で、正直、少し気持ちが悪い。上司が「指示し、動かし、達成させ、褒め、次に向かわせる」。部下は「指示され、動き、褒められ、喜び、次を待つ」。一見うまく回っていても、それは“作業”をさせているだけ。従順なペットや、生命あるおもちゃを育てているのと、変わらないのです。

④ 本当の「成長」を、定義する。
では、本当の「部下の成長」とは何か。それは、部下自身が自分の言葉で、こう語れるようになることです。「今はできないけど、これができるようになりたい」「今はまだまだだけど、こんな人になりたい」「どうしても繰り返してしまうこの間違いを、もうやめたい」。

大事なのは、社交辞令ではなく、本気でそう思っていること。自分で思い、自分で考え、自分で決める。だから、動く。だから、困ったら自分から助けやアドバイスを求めにくる。こんな瞬間に出会えたら、「あ、育ったな」と思えるはずです。これが、ボクの考える「成長」なのです。

 

ステップ2:日々1分の問いかけ

考え方が整ったら、次は行動です。とはいえ、時間はない。ですよね。でも、1分なら? 1分なら、部下をつかまえられると思うのです。

その1分で、こう問いかけてみてください。

  • 「『こうしたい』『こうなりたい』『これはやめたい』って、なにかある? 手伝おうか?」
  • 「例の件、どう? スキル、上がってきてる? 手伝おうか?」
  • 「そういえば本を読んでたら、あなたがなりたいって言ってた人物像に近いヒントがあってさ。興味ある?」

こうした小さな問いは、少しずつ育っていきます。やがて部下のほうからも、成長のヒントを求めてくるようになる。自分の向かいたい方向を上司と共有できて、しかも気にかけてもらえているのですものね。

ま、「いやぁ、特にないですー」と返ってくることもあります。理由は、たぶん3つのどれか。
①近々は本当に何事も自分なりに満足に・完璧にこなせていて手伝いなどが必要のないか、②あなたとの関係が悪すぎて答えたくないか、③1秒も惜しいほど今テンパっているか。

③なら「後でぜひ時間ください!」で解決します。悩ましいのは②です。関係がこじれてしまうと、修復には時間がかかる。だからこそ、日ごろから

部下の「個性」を大切にし、同じ職場で働けることに「感謝」したうえで、部下の言葉に「寛容」に「関心」を示し、「傾聴」し、「共感」し、「解決」へと「鼓舞」し、「希望」を持たせ、「計画」させ、「行動」させる。

ぜんぶ「K」で始まるので、ボクは「11Kの法則」と呼んでいます。ま、言葉遊びです。でも、この関わり方こそが、上司の仕事そのものだと思うのです。これがないと、関係はやがて劣悪になっていきますから。

 

ステップ3:毎日やる「約束」をする

最後は「約束」です。部下自身が語った「こうなりたい」に向けて、何をするかを一緒に決めます。

ここで大切なのは、「いつまでに、何を達成するか」ではなく「毎日、何をやるか」

ありがちな目標設定。6か月後に、みんな大好きKGI/KPIという横文字を達成する、というアレは、たいてい忘れられます。「あれ、私の目標ってなんでしたっけ?」「共有フォルダに入ってるよ、見てみて。実は俺(=上司)も忘れちゃったよ」。そんな会話に、身に覚えはないでしょうか。ボクはあります。

そうではなく、毎日やることを1つ決めて、毎日やると約束する。ほんの少しの時間でかまいません(土日や長期休暇は除いてOKでしょうね)。

約束ができたら、日々の1分の問いかけはこう変わります。「例の約束、〇〇するってやつ、どう? できてる? 難しさない? 悩みない?」

何か月も続ければ、そりゃ育ちます。毎日やっているのですもの。で、上司の腕の見せどころは、部下が「なりたい」と願う姿を、会社としても助かるスキルや知識に、そっと重ねていくことなのです。

 

部下への「やさしい声かけ」例文集|明日からそのまま使える

シーン1:自分で決めた納期に遅れそうなとき
×「いつまでにやるって言ったよね?」
○「1日2日なら、こっちでどうにかする。それを何とかするのが上司の仕事だから、状況だけ教えて。」

納期は、押しつけるより、本人が決めて宣言したほうが守ろうとするものです。それでも遅れることはある。それは失敗ではなく、成長の途中なのです。

 

シーン2:同じミスを繰り返したとき
×「何度言ったらわかるの?」
○「同じところでつまずくってことは、仕組みのほうに原因があるかも。一緒に見てみようか。」

ひとではなく、仕組みや状況に目を向ける。責める言葉は、萎縮しか生みませんものね。

 

シーン3:任せたいけれど不安なとき
×「ちゃんとできる? 大丈夫?」
○「これ、任せたい。信じてるから、困ったらいつでも巻き込んで。」

「信頼すれど期待せず」。信じて任せるけれど、ほったらかしにはしない。いざという時に助ける。それが上司の役割です。

 

シーン4:なかなか変化が見えないとき
×「まだできてないの?」
○「先月と比べたら、ここは確実に変わってるよ。」

変化は、本人にはいちばん見えにくいもの。上司に“見えている変化”を、言葉にして返してあげるのです。

 

シーン5:部下が落ち込んでいるとき
×「気にしすぎだよ」
○「そう感じるの、当たり前だと思う。よかったら聞かせて。」

励ましより先に、まず受け止める。共感が信頼をつくるのですね。

 

部下育成の「目標設定」で最初に決めること

目標設定というと、SMART(具体的で測定可能な目標をつくるフレーム)の書き方から入りがちです。もちろん、目標が具体的であること、測れること、現実的であることは大切です。ま、一理ある。

でも、部下育成で最初に決めるべきことは、そこではないと思うのです。最重要なのは、「誰が決めるか」です。

上司が目標と納期を一方的に指示するより、本人が自分で決めて周囲に宣言したほうが、ひとは約束を守り、育ちます。ここは、前章の「毎日やる約束」と同じ話です。ただし目標設定の章では、もう少しだけ実務寄りに言うなら、目標を“管理するもの”ではなく、“本人の約束を見えるようにするもの”として扱う、ということです。

たとえば、上司が「半年後にこのKPIを達成しよう」と先に置くよりも、まずは部下本人の言葉を聞く。

  • 「今はできないけど、できるようになりたいことってある?」
  • 「最近、同じところでつまずいているなと思うことはある?」
  • 「これだけは毎日やってみよう、と思えることはある?」

ここで出てきた言葉を、いきなり立派な目標シートにしなくてもいいのです。最初は、小さくてよい。1日5分でも、1件でも、1回でもいい。大切なのは、本人が「それならやる」と言えるサイズにすることです。

そのうえで、目標設定に書くべきことは、実は多くありません。

  1. 本人がどうなりたいか
  2. そのために毎日何をするか
  3. 上司は何を見守り、何があったら助けるか

この3つで十分だと思うのです。逆に言えば、この3つがない目標設定は、どれだけきれいにSMARTで整えても、本人のものになりにくい。紙の上では正しくても、日々の確認や支援につながらなければ、ただの記入欄になってしまうのですね。

だから、目標設定は大げさにしすぎないほうがいいのです。本人が決めた小さな約束を、上司が忘れずに見守れる形にする。できていなければ責めるのではなく、難しさを聞く。悩みがあれば一緒に見る。必要なら、会社としても助かるスキルや知識にそっと接続する。上司の腕の見せどころは、ここですね。

目標設定とは、上司が部下を管理するための紙ではありません。部下が自分で決めた約束を、上司が見守り、必要なときに助けるためのもの。そう考えると、目標設定は少しやさしいものになります。少なくとも、部下を追い詰める道具ではなくなると思うのです。

職種別・レベル別の具体的な目標例文は、別記事にまとめる予定です。

 

部下育成を「もう、あきらめようか」と思う夜に

何度言っても変わらない。任せても育たない。「もう、あきらめようか」と思う夜が、リーダーにはあります。ボクにも、ありました。

でも、その気持ちは、手を抜いてきたひとには訪れないのです。向き合ってきたからこそ、しんどくなる。それは、あなたが逃げなかった証拠です。

ここで「あきらめるな」と精神論を言うつもりはありません。この上なく穏やかな心は、この上なく強い心。
関わり方を変えることは、あきらめることとは違うと思うのです。

 

よくある質問(FAQ)

Q. 部下が育たないのは、上司である私のせいですか?
あなた「だけ」のせいではありません。人手不足や業務過多など、個人では変えられない構造要因が大きく影響します。ただし、リーダーシップは常にフォロワーシップより先。「私がどう変わるとよいか」と問い、変えられる範囲から関わり方を見直すのが現実的です。

Q. 何から始めればいいですか?
まずはステップ1「考え方のリセット」からです。自分を責めすぎず、でも他人事にもしない。そのうえで、1日1分の問いかけから始めてみてください。道具より、まず構えを整えるのが近道です。

Q. 厳しくしないと部下は育たないのでは?
強権的な育成が有効だという証拠は、歴史上どこにもありません。厳しさと恐怖は別物です。信じて任せ、いざという時に助ける。静かで穏やかな関わりのほうが、結果としてひとは育ちます。

Q. 忙しくて育成の時間がまったく取れません。
だからこそ「1日1分」と「毎日やる小さな約束」なのです。まとまった研修時間は不要です。日々の短い声かけの積み重ねが、数か月後の大きな差になります。

 

まとめ

部下が育たないのは、あなたのせいだけではありません。まずは構造を知って、肩の荷を下ろす。そのうえで、3つのステップから始めてみてほしいのです。

  1. 考え方をリセットする(自分を責めすぎず、成長の意味を捉え直す)
  2. 日々1分の問いかけ(「こうなりたい、ある?」から始める)
  3. 毎日やる約束をする(半年後の目標より、今日やる1つ)

指示と命令だけで部下を動かそうとしても、ひとは育ちません。逆に、静かで、穏やかで、やさしいリーダーがダメな理由は、この地球上に存在しないのです。やさしさは、弱さではなく、強さ。ボクは、そう信じています。

それでも、一人で抱え込みそうになる夜があります。そんなときは、60分だけ、話してみませんか。

お読みいただきありがとうございます。


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🖊️ 著者プロフィール


野見山 征也|のみやま まさや
リーダーシップ・部下育成・組織づくりについて、noteでも発信しています。
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